2018年07月08日

『ゲッベルスと私』

近年立て続けに公開されたナチもの映画の中では珍しく、ドキュメンタリーであった。しかも取り上げるのはナチスのNo.2、プロパガンダの天才ヨーゼフ・ゲッベルス。どういう切り口で迫るのかなぁと期待していったが、これまでに散々議論されつくした範囲を越えておらずその点では期待はずれではあった。原題は『A German Life』。この映画に限らず、邦題は原題とは程遠いものがつけられる傾向にあるが、今回でいえばやはり原題通りの方が正しい内容であったと思う。「どこにでもいる普通のドイツ人」たる彼女の言葉と、ゲッベルスの言葉、ゲッベルスが作らせたプロパガンダ作品を、モザイクのようにつなぎ合わせていく手法は、恐ろしいほど単調で退屈なものだった。音楽もなく、ナレーションもない。演説をしているゲッベルスの姿も、ヒトラーの写真一枚すらないまま映画は終わった。眠気さえ感じるほどの、極限的に淡々とした描写の果てに突きつけられたのはホロコーストの現実と、「神様なんていない。けれど悪魔はいる」という彼女の言葉だった。それは、ナチの蛮行を決して過去のものとしない、というこの映画のメッセージそのものだったと思う。

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posted by kousa at 09:50| tv/radio/cinema