2018年04月29日

本棚の整理は化石の発掘と似ている

数年来放っておいた本棚の整理を敢行中である。この場合の「整理」とは、本棚の中で右へ左へ本を動かして何となく片付けた気になれることを指すのではなく、要不要に分けて捨てていくことを意味している。埃とねこと戦いながら片付けていたら、懐かしいものが出てきた。
院生時代に、春秋社から依頼を受けて書いたエッセイである。

「少女」の誕生(『春秋』No.485)

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発行は今から11年前。一昔前である。恐ろしい。初々しさが溢れている。ご笑覧いただきたい。
posted by kousa at 20:48| book

2018年04月02日

学問は誰のためのものかが問われる時代を生きて

3月28日付けで京大が軍事研究に対する方針を発表した。
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/229664

京大、軍事研究しない方針 「人類の幸福脅かす」

 京都大は28日、軍事研究に関する基本方針をホームページで発表し、人類の幸福などを脅かすことにつながる軍事研究は行わないとした。
 方針では、京大の研究活動は平和貢献や社会の安寧、人類の幸福を目的とするものだと指摘。軍事研究はそれらを脅かすことにつながるとして、京大の研究者は、研究活動が社会に与える影響を自覚しながら、社会からの信頼に応えていくことが求められるとした。


偶然にもこの数日前に『科学者と軍事研究』を読み終わったばかりであったため、京大が何故このような声明を出さなければならなかったのか、この声明が持つ意味とは何なのか、について門外漢ながらもうっすらと感じるとることが出来た。科学技術の躍進と戦争との連関は今更言うまでもない。続く大学が多いことを祈るのみである。



さて『科学者と軍事研究』である。前著となる『科学者と戦争』は未読であるため、この本の内容だけで感想を述べさせていただけば、大変面白い内容であった。まず驚いたのは、この本で紹介されているデータが2017年という最新のものであるということだった。それは著者である池内氏及び岩波書店が、この問題についてほぼリアルタイムで問題提起をしなければならない危機的状況であると捉えていることの証左であるように思う。時間をかけているヒマはない、イマココの問題として発信しなければ転がり落ちるように状況は悪化の一途を辿る。そんなヒリつくような焦燥感が、文字と文字の間から滲み出てきているようですらあった。

ただ納得がいかないのが「あとがき」の最終ページにある、この一文である。
日本国憲法の平和主義は、やはり多数の市民の心に染み込んでいる真正直な心情であり、それは簡単には覆らないと信じている。私たちは、そのような思いに力を得て運動を展開し、それなりの手応えを得ており、それが運動を継続する力の源泉となっていることは確かである。これによって、少しでも科学者の軍事研究への参画が抑制され、学問の原点が守られることを期待している。(下線引用者)

先生の仰るように、「日本国憲法の平和主義は、やはり多数の市民の心に染み込んでいる真正直な心情」なのであるとすれば、何故その平和国憲法の改憲を謳う政権が戦後最長となっているのか。本書の最後の最後で、何故こうも楽観的なまとめになるのかが全く理解が出来ない。果たしてここで述べられている「多数の市民」とは、一体誰のことを指しているのだろうか。

この国がまだ(かろうじて)独裁政権ではない以上、急速に舵を切っている安倍政権を支えているのは、名もなき「日本国民」ということになる。「平和主義」が染み込んだ「多数の市民」が本当の意味で「多数」ならば、現状の惨憺たる有様は現実化していないはずである。池内氏が何を思ってあのようなまとめを書いたのかわたしには分からない。何か本著を書くに当たって、「悪いのは政権であって、あなたたちではありませんよ」という最低限のパフォーマンスが必要だった可能性も否定できない。だが「名もなき国民」による選択の是非を問わずに政権批判をするのは、もはや机上の空論に近い。その点だけが残念であった。
posted by kousa at 22:12| book

2018年03月21日

入門編なのに入門編じゃない本

日本語の書き方について改めて考えさせられる日々を送っています。元々自分が悪文書きであるという自覚はありましたので、これは良い機会だと思い、日本語の書き方について良い本はないかと尋ねたら、この本を勧められました。



電車の中で読んでいたのですが、マスクがなかったら完全に危ない人になるくらい噴き出しました。本多さんを相手に「面白い本ですね!」と言ったら殺されそうですが、本当に面白い本でした。悪文がいかに作られるか、人に伝わらない文章はどのように出来上がるか、構文のどこがおかしいと混乱や誤解を招く表現になるのか、などを実例をあげながら説明されています。

自分の文章のどこがよくないのか、改めて自覚させられるきっかけとなり読んで良かったなぁとしみじみと思った訳ですが、しかしこれが例えば学部四年生の時に読んでいたら、ここまで「読んで良かった」と思えたかなぁ?とも思いました。この本は「本多勝一」の日本語の書き方を教えてくれている本であって、「日本語の正しい書き方」ではないわけです。読んでいて面白い部分もあれば、納得は出来るけれども同意はできないという箇所も多々ありました。

学位論文を書き終わった後で読むような本かと、自分で思いながら読み始めましたが、読み終わった今は、学位論文を書き終った今でなければこの本を消化できなかったなぁ、という思いでいます。読んで良かった。まぁ読んだところで明日からいきなり文章力が飛躍的に上がるわけではないのですが。
posted by kousa at 09:27| book